テーマが決まるまで
私は入学したての頃から、『伝統工芸』に興味を持っていました。
日本国が長い歴史の中で培ってきた技術や文化を生かしつつ、新しいものを作り続ける方法、もっと世界中の人にも、もちろん日本の人にも工芸品を知ってもらえる方法はないかと、様々な授業を三年間にわたって取ってきました。
環境デザイン、システムデザイン論、現代造形論、心理統計、森林経済論、基礎造形、農政経済、樹木学、博物館概論、芸術文化論、社会学、方言学、文化人類学、インダストリアルデザイン演習、アジア宗教思想史・・・・
このような授業を受講しながら、自分の中での伝統工芸についての意見はどんどん大きく、そして変化していきました。
しかし、いざ卒業論文のテーマを決めようと思うと、なかなか決めることができません。工芸と一口に言っても、経済面、文化面、技術面、教育面、デザイン面、切り口は無数にあり、授業を受けるたびにその切り口は増えて増えて、三角錐くらいだったのが
いろいろな一面が増え続け、気づいたら正十二面体ほどになっていました。
問題提起ができないことには、先行研究も、仮説もあったもんじゃあありません。
よく論文作成方法の本では、『疑問を書き出してみよう』とか『付箋を使おう』とか『情報カードを作ろう』とか、ライフハック的なものがよく紹介されています。
疑問がないから、何にも書き出せません!
あれも書きたいこれも述べたい、そうこうするうち私は、皮肉にも自分で集めた情報におぼれ、何もすることができなくなってしまいました。